戦後から現在に至るまで、日本においての自衛隊・軍隊を持つことに関して議論されてきました。
「メリット・デメリットという話ではない」
このように考える方もいるかと思いますが、本記事では右にも左にも偏りなく、中立的に「国が軍隊を持つことのメリットとデメリット」を詳しく見ていきます。
世界で軍隊を持たない国
現在世界には軍隊を持たない国は30カ国ほど存在します。
しかし軍隊を持たないと言っても」、「国」ということなので、政治が存在し、外交、安全保障などは普通の国同様に存在します。
つまり、「軍隊を持たない」=「完全な平和国家」ということではなく、「ワケアリ」というのが現実です。
例えば、以下の国々では軍隊を保有していませんが、矢印の右側に書いている国に守られています。
アンドラ⇨スペイン&フランス
モナコ⇨フランス
パラオ⇨アメリカ
ナウル⇨オーストラリア
以下の国では軍隊は持たず、国家警察というのを保有しています。
コスタリカ⇨国家警察
パナマ⇨国家警察
ハイチ⇨国家警察
これはほんの一部ですが、このように世界には軍隊を持たない国が多数存在します。
ちなみに日本の自衛隊に関してですが、あくまで専守防衛が目的なので、「軍隊ではない」と言いたいところですが、世界の軍事力ランキングでは7位ということになっていて、さらにはアメリカからの兵器も大量に保有しているということから、難しいところでもあります。
これは憲法学者によっても解釈が違いますが、本記事では「“完全な軍隊”を持つことのメリット・デメリット」ということで見ていきましょう。
軍隊を持つことのデメリット
①軍隊への投資=利益がない
軍事費は膨大なお金がかかります。
アメリカのように自国で完全に開発・発展しているなら、技術力の拡大、技術革新、宇宙開発などなど、様々なリターンがあります。
しかし、日本のようにアメリカに依存した状態での兵器の購入などの軍事費投資は戦争に勝たない限り再生産しません。
つまり膨大なお金がかかります。
②弾薬の消費期限
兵器や弾薬にも消費期限が存在します。
これは「15年サイクル」と言われていますが、この在庫消化をしなければ生産計画がずれて不況になってしまいます。
アメリカが約10年おきに戦争をしたり、代理戦争を起こすのは、同盟国に弾薬を売ったり、戦争で消費したほうが国内で廃棄するよりも安く済むという理由からです。
つまり軍隊を持つことにより、この在庫消化のお金がかかってきます。
③戦争による犠牲
政治はいつも安定するとは限りません。
悪政、または軍部の暴走などにより戦争が起こる可能性が出てきます。
また、「軍隊を持つこと」=「戦争ができる国になる」と考える人も多いのではないでしょうか。
これは特に日本の場合、第二次世界大戦での多大なる犠牲、過去の悲惨な歴史があるからこそ難しいところでもありますね。
④同盟国の戦争に参加しなければならない
日本の最も近い同盟国といえばアメリカです。
アメリカは色々な国と戦争をしていますが、日本も軍隊を持てば当然のごとく戦争に参加しなければならない状況が出てきます。
したがって、「もう二度と戦争はしない」と言っていても他国の戦争に巻き込まれてしまう可能性が圧倒的に高くなります。
同盟国に加担するということは必然的に敵国も増えてきます。
今まで良い関係にあった国々でもアメリカに加担することにより敵になってしまいます。
また、これは国同士の関係だけではなく、テロの標的になりやすくなったり、日本人旅行者のビザ、パスポートが制限されてしまう可能性もあります。
現在日本のパスポートは「世界で最も信頼されている」と言われていますが、それも過去の話になるかもしれません。
⑤徴兵制の可能性
実際に自衛隊が軍隊になり、「戦争になる可能性」が大きくなれば、軍隊志望者は減ります。
そうなったときに徴兵制になる可能性はないとも言い切れません。
「現代戦では徴兵制は必要ない」
このように言う人もいますが、徴兵制というのはなにも戦場に送る人材だけでなく、支援や治安維持のための徴兵という場合もあります。
例えば、最近徴兵制を復活させたフランスですが、「奉仕義務」という形で、パリの治安維持などに従事しています。
今現在「日本で徴兵制」という言葉を聞いてもピンと来ないかもしれませんが、今後何が起こるかもわかりません。
政情が悪化したり、テロなどが起きれば状況は一気に変わります。
そんなときに軍隊を持っていれば、徴兵制を復活しようという声が上がることもありえます。
自分たちでなくとも、今後数十年後自分の子供や子孫が徴兵制で「義務」を課させられる可能性はないとも言えません。
軍隊を持つことのメリット
①軍隊=国家の基本
上でも書きましたが、メリットとかデメリットとかの問題ではなく、軍隊を持つことは「国家の基本」とも言えます。
軍隊を持つこと=国家の保持でもあり、軍隊を持たない=属国を意味します。
軍隊=軍国主義
戦後日本では常々このようにイメージされてきましたが、国家を守る上で軍隊は必要不可欠であり、軍人というのは最も尊敬されるべき方々でもあります。
②抑止力
強い軍を持つことは抑止力に繋がります。
現在日本はアメリカの「核の傘」に守られていると言われていますが、日本がどこの国にも攻撃されないのは同盟国に世界最大の軍と核兵器を持ったアメリカがいるからという理由が大きいです。
あくまで自衛隊というのは専守防衛なので、抑止力にはならないという意見があるのも現実です。
③外交
軍隊を持つことは外交において有利に立つことができます。
現在日本はアメリカになにも言えません。
理由は単純ですが、第二次世界大戦以降アメリカは日本を守ってくれています。
現在多くのアメリカ軍基地が日本国内にありますが、これは「日米地位協定」というものがあるからです。
例えば、日本に駐留しているアメリカ兵が日本国内で罪を犯したときに、この犯罪者を日本の法で裁くことができず、アメリカ側が裁くことができます。
これはどう考えても「対等な関係」とは言えなく、アメリカ軍の特権を保証し、日本国家の主権、国民の人権をも侵害するものでもあります。
実際に「沖縄米兵少女暴行事件」の際、米兵が12歳の少女を集団拉致し性的暴行した時、日本国内で起こった事件にも関わらず、アメリカ側は米兵の身柄を渡すことを拒否しました。
「なんで改定しないの?」
ということですが、ドイツやイタリアなど第二次世界大戦で敗戦した他の国々ではアメリカとこれほど不平等な協定を結んでいません。
いずれも改定しています。
日本だけが改定できないのは外交力がないからです。
外交力がないのは軍隊を持っていない、つまり立場が下だからです。
強力な軍隊を持たないことによって、不条理な協定、条約を結ばれてしまうのは歴史の常です。
ちなみに幕末においても、黒船来航⇨不平等条約をアメリカと結ぶことになったのも当時の日本はアメリカに対抗できるほど強力な軍隊を持っていなかったからです。
つまり強力な軍隊を持つことによって、アメリカだけでなく世界のどの国とも外交において優位に立つことができます。
④技術開発
デメリットとして、軍隊はお金がかかると書きましたが、その分技術開発につながります。
現在アメリカから大量に兵器を買っている日本ですが、これはあくまで防衛費なので利益がありません。
一方、自国だけで兵器を開発、発展させれば、軍事産業、技術開発ともに発展します。
つまり、未来への「投資」になります。
また、現在は北朝鮮による拉致被害者の救出は軍隊がないのでアメリカに頼り切りになっている状態です。
拉致被害者の救出だけでなく、災害時の対策や救出作業への向上にもつながるので、技術開発は軍事力だけでなく人助けにも役立ちます。
⑤信頼問題
上でも書きましたが、日本の防衛力は世界で7位です。
それにも関わらず、同盟国が助けを求めている時に日本は何もできません。
憲法で禁止されていると言っても海外の人たちからしてみればそんなことは知りません。
「なぜ日本は大国なのに助けてくれないんだ」
これは他国との信頼関係に関わります。
実際に湾岸戦争時に日本政府は同盟国である多国籍軍への支援として(憲法違反になるために)自衛隊を現地に派遣できませんでした。(地雷除去はしました)
その代わりに多額の支援金を同盟国に支援しましたが、「日本はお金は出すけど血は流さない」と国際社会から批判されました。
軍隊を持たないということは、他国に軍隊を派遣できない、集団的自衛権の行使に制限がかかってしまいます。
「軍隊を持つこと」=「戦争」
このように直結することはありません。
しかし、軍隊を持つことにより、「戦争ができるようになる」のは事実です。
さらに、「戦争ができるようになる」ということは、「同盟国の戦争に加担せざる負えなくなる」状況に陥る可能性も当然出てきます。
「コスタリカの奇跡」と言われているように、軍隊を持たない国として知られているコスタリカは軍事費を使う必要がないのでその分無料の教育費を国民に提供しています。
このように軍事費を削減できればその分他の部分で予算を使えるので圧倒的な利益と言えます。
しかし、日本は例外です。
近隣諸国に北朝鮮、中国、ロシア、アメリカがいる状況で、さらに経済大国でもあります。
世界で最も歴史の長い国として知られている日本において、軍隊を放棄するというのはあまりにも非現実的でもあります。
さらに言えば、戦後アメリカに軍隊を解体され、アメリカが言うことに対しては一方的に受け入れなければならない状況であるのも現実です。
外交、技術開発、抑止力、国家間の信頼問題などの面を考慮すれば、軍隊を持つことのメリットも十分にあると言えます。
「他にも日本の政治や国際問題について詳しく知りたいな」
こんな方、以下の記事をおすすめします⇩
コメントを書く