【アメリカの歴史教育】アメリカは歴史をどのように教えてるのか

【アメリカの歴史教育】アメリカは歴史をどのように教えてるのか

 

当ブログ「ミナトのすゝめ」では日本とアメリカの文化の比較記事を度々書かせていただいています。

今回は「歴史の教科書」という視点から日本とアメリカを比較していこうと思います。

 

まずはこちらのツイートから⇩

 

 

これに関してもう少し深く解説していきます。

 

歴史の授業というのは国民としてのアイディンティを形成するのに大きな役割を果たしますが、政治的に偏ってはいけないと同時に、自国の尊厳を保つ物でないといけません。

 

最近では日本の歴史の授業から「日本史」がなくなって、「国際史」という科目になる、というのが話題となっていますが、アメリカでは自国の歴史&世界史はどのように教えているのでしょうか。

本記事ではアメリカの歴史教科書はどんなふうに書かれているのか、日本の教科書と比べてどう違うのか、日米の歴史を振り返りながら詳しく書いています。

 

本記事の信頼性

 

筆者は「歴史オタク」というふうに自負しています。笑

高校では多くの方が目を通したことはあるであろう「山川出版社」の世界史の教科書は数回読みました。

 

もちろん、アメリカの歴史の教科書も読んだこともありますし、アメリカの大学でも歴史のクラスをとっていたことがあるためなんとなくクラスの雰囲気も分かりますのでご安心を。

度々参考文献も貼っていくのでチェックもかねてお願いします。

 

「まずはアメリカの歴史について細かく知りたいな」

こんな人はこの記事をおすすめします⇩

 

 

こちらの本もオススメです⇩

 

 

英語と日本語の両方で読めるので英語の勉強にもなります。

僕はこれを英語&日本語で3往復ほどしました。

 

 

【大前提】州によって教科書が違う

 

まず大前提として知っておかなければならないことは、「アメリカは州によって使っている教科書が違う」という点です。

日本では文部省が教科書検定というのを定めていて、ある一定の基準を満たす出版社&教科書を使わなければなりません。

 

したがって、中学&高校となるとほとんどの公立学校では同じ教科書が使われています。

しかし、アメリカでは基本的には州や自治体が決めています。

 

なので、ニューヨークの学生とロサンゼルスの学生では使っている教科書が違うんですね。

 

問題点

 

「でも学ぶことは一緒なんだから大体は同じことをやってるんでしょ?」

いいえ。ちがいます。

 

例えば、アメリカで強い影響力を持ったキリスト教の保守団体なんかは、各州に圧力をかけており、生物の授業において旧約聖書の「創世記」に基づく創造論(人類が唯一神により創造されたとする信仰)を記載した教科書を使用して教えることが義務付けられています。

これは科学と宗教の分離が出来ていないということで問題になっています。

 

また、アメリカ史最大の汚点の一つとされている、「日系人収容所(第二次世界大戦中に日系人の人が強制的にアメリカ政府によって収容された)」についてです。

これは主に日系人の多かった西海岸で起こったことですので、「西側の各州は詳しく教えている一方で、あまり関係のなかった地域では触れられていなかったり、そもそも教えていない」こういうことが起きてます。

 

これにより、同じアメリカ人でも「歴史認識の食い違い」が生まれてしまいます。

 

もっと深刻なところで言うと、南北戦争に関してです。

これは、北部の州(奴隷制反対)と、南部の州(奴隷制賛成)の対立でアメリカ史唯一の内戦ですが、これの記述も若干ながら偏ってしまうこともあります。

 

例えば、北部の州では奴隷制の非人道的な行為&黒人の方の不幸な境遇(アンクルトムの小屋の紹介)やリンカーン大統領(南北戦争当時の大統領)の名言(スピーチ)などに焦点を当てていますが、南部の州では奴隷制の裏にあった経済的インパクトや当時の司令官などに焦点を当てていることもあります。

 

このように国内で教えている内容&焦点のポイントが若干ながら偏ってしまいます。

日本で言えば、鹿児島県だけ西郷隆盛の名言や逸話を明らかに多めに教えているみたいな状態ですかね…

 

 

日本の歴史の授業との違い

 

日本とアメリカの歴史教科書&歴史授業について比較した時に、いくつかの違いがあるのでここではそれをご紹介します。

 

写真の使用量

 

日本とアメリカの教科書の大きな違いは写真の使用量です。

日本の教科書は写真を多めに使って、視覚的にわかりやすいように工夫してあります。

 

また、戦争の悲惨な写真や子供の写真を使って、「感情に訴える」記述をしていることが多いです。

一方でアメリカの歴史教科書に関しては、文字が多めです。

 

事実だけを載せて、時に大統領や偉人の名言を記載しています。

 

日本⇨What アメリカ⇨Why

 

アメリカでのクラスはディスカッションがメインです。

それは歴史の授業にも同じことが言えます。

 

日本は「〜年に〜が起きて、こういう結果になった」⇐このような教え方が一般的

アメリカでは「なぜ起きたのか」⇐これをクラスで議論します。

 

「アメリカでは原爆投下は正当化されている」

このように思っている人が多いと思いますが、これは間違いです。

 

クラスでは「原爆投下の判断は正しかったのか」、または「どうすれば防げていたか」まで話し合います。

日本ではここまで踏み込んだ授業はおそらく無理です。

 

真珠湾攻撃について

 

アメリカの歴史教科書では日本による真珠湾攻撃はアメリカ史上経験したことのなかった、「Surprise Attack (奇襲攻撃)」&「屈辱」という表現が使われています。

アメリカで最も使われている歴史教科書、「アメリカンオデッセイ」と、日本の「詳説日本史」での記載内容を比較してみましょう。

 

アメリカの歴史教科書での記述

日本の首脳部は、アメリカの膝元を攻撃することを勧める山本五十六提督の計画を承認した。……しかし、山本自身は対米戦争の長期的見通しについて少しも楽観していなかった。山本は予言的に語った。「対米英戦争の初めの半年や1年は暴れ回り連戦連勝してみせます。しかし、2年、3年と長引いたら、最終的な勝利は確信できません」。

……警告も無く、日本の急降下爆撃機と雷撃機がハワイの透き通った青空を急襲し、……死と破壊の雨を降らせた。……日本軍は5隻の戦艦を含む19隻と188機の飛行機を破壊し、2300人以上のアメリカ人が殺された。これはアメリカ軍史上、外国軍に喫した最悪の敗北だった。

引用:アメリカン・オデッセイ

 

日本の歴史教科書での記述

アメリカ側の提案(ハル=ノート)は……満州事変以前の状態への復帰を要求する最後通告に等しいものだったので、交渉は絶望的になった。12月1日の御前会議は対米交渉を不成功と判断し、米・英に対する開戦を最終的に決定した。12月8日、日本陸軍が英領マレー半島に奇襲上陸し、日本海軍がハワイ真珠湾を奇襲攻撃した。日本はアメリカ・イギリスに宣戦を布告し、第二次世界大戦の重要な一環をなす太平洋戦争が開始された。

引用:詳説日本史

 

このようにどちらの記述も間違いではないですが、受け取り方によってはだいぶ違う見方になります。

 

アメリカ⇨完全なる日本の裏切りであり、あの奇襲攻撃は残虐極まりない。

日本⇨アメリカ側の提案は日本としては受け入れられるものではなく、話し合いの結果、仕方ない決断であった。

 

 

まとめ:歴史教育は複雑

 

歴史教育というのは今後とも日本の課題となると思います。

みんなが納得する教え方というのは存在しません。

 

例えば、ドイツとフランスは歴史の授業に同じ教科書を使用しています。

これはドイツ側が圧倒的に妥協した結果です。

 

例えば、ドイツ&フランスの歴史の授業では第二次世界大戦中のナチス・ドイツ(ヒトラー)をはじめ、当時のドイツを徹底して否定しています。

もちろんナチス・ドイツが実際にやったことはとても正当化できるものではありませんが、

 

当時のドイツ⇨絶対悪

 

これを教育することによって、国の尊厳が失われるのも確かです。

実際にギャロップの「愛国心調査」ではドイツ国民は圧倒的に低いです。

 

参考:Would you willing to fight for your country? – Gallup survey

 

これはドイツでの歴史教育が及ぼした副産物なのは明らかです。

 

逆に国の壮大な歴史や栄光だけを伝えても良くないのも事実ではあります。

なんでも「バランス」が重要ですね。

 

そういう点では、アメリカの歴史教育のスタンスは比較的いいのかも知れませんね。

 

 

「もっと詳しくアメリカの歴史について知りたいな」

下の記事にもっと詳しくまとめています⇩