【アメリカとキリスト教】アメリカの学校教育におけるタブー

【アメリカとキリスト教】アメリカの学校教育におけるタブー

 

当サイト「ミナトのすゝめ」はアメリカの文化や政治、歴史に特化した情報ブログです。

筆者は現在アメリカ在住です。

 

ということで先日こんなことをツイッターでつぶやきました⇩

 

 

本記事ではアメリカにおけるキリスト教の影響力、アメリカの教育制度においての「タブー」に切り込んでいます。

 

【宗教】日本VSアメリカ

 

ツイートにもあるように第二次世界大戦後日本はアメリカの統治下になりました。

そこでアメリカが第一に目をつけたのが、戦前行われていた「教育勅語」や「神道教育」の廃止でした。

 

GHQは神道こそが日本の国粋主義を生んだと考えました。

「二度とアメリカに歯向かわないように」といういうことで徹底して教育改革を進めたわけですね。

 

もっと重要な点は、神道(宗教)を教育現場で教えるのは「政教分離(政治と宗教の分離)」の憲法に反するということもあったからです。

明治維新以降、政府の方針で徹底して「愛国主義教育」を進めていく中で「神道=道徳教育だから違憲ではない」というのが当時の政府見解でした。

 

しかし戦後、「神道も立派な宗教であり神道教育=宗教教育になるから日本創生の神話を歴史として教えるのは駄目だ」というのが一般的になりました。

したがって現在の日本の教育現場では神道の成り立ちや皇室の起源は全く教えていません。

 

教えていないどころか「神道=タブー」になっています。

 

保守派の評論家の方々のお言葉を借用させていただくと、「日本の起源を教えない教育制度はあまりにもおかしい」ということになっています。

 

アメリカとキリスト教

 

一方でアメリカはキリスト教の国です。

2015年の統計では約4人に3人がキリスト教というデータが出ています。

参考:Christianity in the United States

 

実際にキリスト教はアメリカの歴史の中で保守派勢力にものすごい守られています。

ニューヨークやロサンゼルスなど大都会ではあまりわかりませんが、地方に行くと今でもものすごい影響があることがよくわかります。

 

特に南部ですね。

南部は昔から「古き良きアメリカ」ということで保守的な土地柄でもあります。

 

米国憲法第一条

 

【宗教の自由】というはアメリカ合衆国国憲法第一条で「表現の自由」とともに保証されています。

同時にこの第一条では「国教の樹立」を禁止しています。

 

つまり「政教分離」です。

政治や国が宗教に関わりを持つことを禁止しています。

 

これは第二次世界大戦後アメリカが日本に「神道教育」を禁止した理由と全く同じです。

しかし当のアメリカではこの「政教分離」が守られていないのが現実であり、これはアメリカ国内のタブーともなっています。

 

 

アメリカの教育制度

 

結論から言うと、アメリカの教育現場では宗教教育が未だに大きな部分を占めています。

有名なのがカトリック系の私立学校ですね。

 

アメリカの私立学校は「宗教系学校」です。

割合としては私立学校の80%だと言われています。

 

これらの学校では「毎月2回は教会に行くこと」「保護者は必ずボランティア活動に参加すること」などなど厳しいルールもあります。

また男子校や女子校などといった男女別学の学校も多く、宗教的な考え方から「LGBT(バイセクシャル)」の方を受け入れていない学校もあります。

 

このような学校では日本人がよくイメージするような「アメリカの学生生活」とはかけ離れています。

つまりアメリカは宗教に関してはかなり保守的なのが現実です。

 

キリスト教系の学校

 

もちろんこれら宗教学校は公立学校とは違い私立なので、個人や教会からお金が出ています。

だからこそ国や州の教育法の大部分が適用されません。

 

したがって授業のカリキュラムや学校方針はわりと自由なんですね。

また私立学校だけでなく、公立学校でさえも連邦政府の規定ではなくそれぞれの州によって教育方針が異なります。

 

なので日本のように国指定の教科書などはなく、州によって教科書・授業の内容が違ってきます。

中には旧約聖書の「創世記」に基づく創造論(人類が唯一神により創造されたとする信仰)を教えている学校も多いのも事実です。

 

日本との違い

ここで日本とアメリカとで比べてみますが、日本では教科書検定からなにまで文科省の学校教育法が適用されるのでここまで教育が偏ることはありません。

冒頭に戻りますが、日本の義務教育で神道の神話を教えるのはタブーとなっています。

 

ましてや「神道系の学校」など存在しません。

しいていえば神道学科がある東京の「國學院大學」と三重県の「皇學館大学」くらいでしょうか。

 

いずれも義務教育ではありませんね。

 

歴史における対立

「アメリカの学校では創造論を教えている」ということですが、アメリカの歴史において創造論と進化論が長く対立してきました。

 

進化論⇨生物学的に人間は進化して今に至るという科学的論説

創造論⇨「創造主なる神」に求める考え方であり、天地万物の全てが神に創造されたとする宗教的論説

 

つまりこういう違いです。

「どちらを教えるべきか」というのは、アメリカで現在においても議論がされています。

 

というのも、アメリカの宗教団体などが自分たちの子供が進化論を教えられることに大反対して裁判にもなっています。

以前はテネシー州やアーカンソー州では進化論を教えるのを禁止した法律もあり、進化論を教えた教員が有罪になったケースもあります。

 

一番有名なのが「スコープス裁判」というものですね。

長らくこの進化論と創造論は対立してきました。

 

現在でもキリスト教系の学校に「創造論は宗教的解釈であって科学的根拠がないので教えるべきでない」と言おうもんなら大炎上します。

これだけこの問題はタブー化しているということですね。

 

政教分離

 

ということでアメリカは日本人が想像する以上に「キリスト教国家」です。

アメリカ合衆国大統領は就任式で聖書に手を置き宣誓を行います。

 

アメリカで流通している「硬貨」には「In God We Trust(我々は神を信じる)」と書かれていますが、これはアメリカの公式の標語です。

この「神」というのは言うまでもなく、多くのキリスト教徒から嘆願が寄せられた結果で書かれています。

 

義務教育においては「創造論」が今でも広く教えられています。

アメリカは日本に「政教分離」を押し付けてきましたが、当のアメリカも根っからの「宗教保守の国」であるというのがわかりますね。

 

歴史認識

 

これの何が問題なのかと言うと、同じアメリカ国民で歴史認識に違いがあるわけですね。

人間は「神によって創られた」という説と「人間は進化して今に至る」という説とではあまりにも違います。

 

例えば「日系人収容所(第二次世界大戦中に日系人の人が強制的にアメリカ政府によって収容された)」についてです。

これは主に日系人の多かった西海岸で起こったことですので、「西側の各州は詳しく教えている一方で、あまり関係のなかった地域では触れられていなかったり、そもそも教えていない」こういうことが起きてます。

 

もっと深刻なところで言うと、南北戦争に関してです。

北部の州と南部の州では南北戦争についての教え方が異なるという問題があります。

 

このへんの歴史認識問題について「もっと深く知りたいな」という方は以下の記事がおすすめです⇩