トランプ政権の移民政策⇨アメリカ農業の人手不足が深刻な件

トランプ政権の移民政策⇨アメリカ農業の人手不足が深刻な件

 

こんにちは。当サイト「ミナトのすゝめ」では、英語学習やアメリカの文化をはじめ、政治や歴史に関して幅広く情報を発信しています。

本記事では「アメリカの政治」に関して書いています。

 

ということで、先日ツイッターでこんなことをつぶやきました。

 

 

日本でも「地方過疎化」から始まり、農業の人手不足がかなり深刻となっていますが、現在アメリカでも全く同じことが起きています。

これはトランプ大統領の「移民政策」によってさらに拍車がかかっているからですね。

 

本記事ではトランプ大統領の移民政策を中心にこのへんのアメリカの社会問題に関して詳しく解説しています。

 

アメリカの農業

 

出典:African-American history of agriculture in the United States

 

アメリカは昔から広大な土地があり、農業大国です。

日本のスーパーに行けばよくわかりますが、アメリカ産の牛肉など様々な食品がアメリカから輸入されており安値で売られていますね。

 

そんなアメリカが現在のような農業大国になったのは、最近の話ではありません。

アメリカの農業の発展は19世紀のヨーロッパで起こった天候異変とクリミア戦争にまでさかのぼります。

 

天候異変によりヨーロッパの穀物の値段は高くなり、戦争によりロシアからの輸入も途絶えてしまったイギリスはアメリカを頼りにします。

アメリカはこの時から農産物を海外に輸出することになり、農業大国の基盤を造りました。

 

これは現在でも同じで、アメリカの農業は世界に輸出されアメリカ経済を支えています。

 

農業発展=戦争

 

トランプ大統領の「移民政策」の話に行く前に少し余談になりますが、アメリカの農業が発展したのは戦争が大きく関係しています。

というよりも、「アメリカが戦争をし続ける理由」が農業の発展でもあります。

 

例えば第二次世界大戦の頃ですが、戦場となったヨーロッパでは食料不足が深刻となりました。

そんな時に連合国の唯一の頼りがアメリカでした。アメリカ本土は戦場ではなかったからですね。

 

そんなアメリカは連合国諸国に対し大量の食料を供給し、アメリカの農業は発展を遂げました

これと全く同じことが、朝鮮戦争、ベトナム戦争、アフガン戦争でも起こります。

 

つまり現地の連合国軍や自国の兵士たちを「養う」ために、アメリカの農業が戦争時の「食料供給基地」の役割を果たすのです。

兵士の兵糧確保により、結果として農業がどんどん潤います。

 

これが今でもアメリカが定期的に他国と戦争をし続ける理由の1つでもあるのですが、以下の記事ではさらにもっと詳しく解説しているので、本記事を読んだあとに是非おすすめです⇩

 

 

アメリカ農業の人手不足

 

さて余談はこのあたりで終わりにして、ここからアメリカの農業の人手不足に関して詳しく見ていきましょう。

アメリカは日本とは違い「中央集権国家」ではないので、例えば「東京」のように一極に人工が偏っているというわけではありません。

 

アメリカには日本語で言う「上京」という言葉は存在しません。

テキサスの田舎に住んでいた人が高校卒業とともにはるばるニューヨークの大学まで行くことはめったにありませんね。

 

サウスダコタの大学を出た人がロサンゼルスの会社にわざわざ就職するのはかなり少数派です。

強いて言うならば、州の中での「上京」というのがあるくらいです。

 

つまりテキサスの田舎に住んでいた子が高校卒業とともにテキサスの州都であるオースティンの大学に行くことはあります。

したがって、「州」単位で見てみるとやはり都市部に人工が集中しているのが現実でもあります。

 

若い人は州都などの大きな都市の大学を出て、その大学付近で就職活動をするのが一般的です。

このことからもわかるように、アメリカでもやはり日本と同じように若い人は都市部での就職を好み、農業にはあまり興味がないのが現実です。

 

農業=移民

 

「じゃあ誰がアメリカの農業を担っているの?」ということですが、これは移民によって成り立っています。

 

繰り返しますが、アメリカには広大な領土があり、農業には「これでもか」というくらい素晴らしい土地でもあります。

主な農作物はトウモロコシ、大豆、綿、干し草と言われています。

 

 

こちらはトウモロコシの収穫時の映像ですが、このように最先端の技術を駆使して大量生産を行います。

このように広大な農家を持っているアメリカ人は言うまでもなく「大金持ち」です。

 

広い農場から大量生産を行うために昔はアフリカから連れてこられた黒人を奴隷として働かせていました。

これは歴史の授業でも習うかもしれませんね。

 

アメリカの農業発展のための「労働者」として人手が足りなかったので黒人を奴隷として働かせていたという歴史があります。

これが現在アメリカに黒人がたくさん住んでいる理由でもありますね。

 

1865年の南北戦争によって黒人奴隷が「開放」され、田舎の農家の地主も奴隷を持てなくなりました。

では今ではテクノロジーも発展し、労働者不足も「だいぶマシになったのかな」と思うとそうではありません。

 

現在では黒人奴隷の代わりとなっているのが、安い賃金でも働いてくれる移民の労働者たちです。

というのも、「安い賃金なのにここまでハードな仕事」はやはり人気がありません。

 

しかし、移民の方々は違います。

 

「アメリカで生活できるなら…」

「自分の国よりもマシだから…」

 

こうして、「移民による安い労働力」が成り立っています。

 

アメリカの移民

 

出典:Implications of immigration policies for U.S. farm sector and workforce

 

「移民がアメリカ人の職を奪っている」

 

こんな問題ばかりがニュースで騒がれていたりもしていますが、実際はそうでもありません。

移民こそがアメリカの「穴」を埋めてくれているとも言えます。

 

例えばですが、アメリカは先進国の中でも珍しく少子高齢化の国ではありません。

高齢者の割合と同じくらい若者も住んでいます。

 

これは移民がいるからですね。

日本を見れば痛いほどわかりますが、国が豊かになれば少子高齢化が進み、それに比例し地方過疎化、農業の人手不足が深刻になります。

 

しかしアメリカは移民がいるからこそ、少子高齢化も人手不足も補えていたのが現実でした。

 

トランプ大統領の移民政策

 

「メキシコからの移民を防ぐために国境に壁を建設する」

 

トランプ大統領の移民政策で有名なのがこの「壁」ですね。

ここまででわかるように、メキシコからの移民をストップさせれば困るのは農家の方々です。

 

実際に現在進行形で農業の人手不足が深刻な問題となっています。

繰り返しますが、農家の仕事は安い賃金なのにかなりハードです。

 

若い人で「やりたい」なんていう人はなかなかいません。

 

代わりに「俺はなんでもやるよ」という移民の方がやってくれます。

中には「不法移民」の方もいるのですが、アメリカは今までこれを「暗黙の了解」としていました。

 

というのも、どちらにとっても「Win Winの関係」だったからですね。

しかしトランプ大統領が不法移民を排除することにより、農業に人手が回らなくなったのも事実です。

 

都市部と地方の考え方の違い

 

ここまででわかりますが、移民によって恩恵を受けるのは地方です。

移民こそが地方や田舎などの農業の人手を補ってくれるからですね。

 

逆に都市部は、ただでさえ競争が激しいのに移民によってさらに職が少なくなります。

もっといえば人種間の争いや文化の違いなどにより起こる「治安の悪化」などもありますね。

 

このようにアメリカの政治において都市部と田舎の方々の身の回りにおける状況が全く違います。

だからこそ政治思想による「田舎と都市部での分断」が現在アメリカで問題となっています。

 

「移民を反対」でトランプ大統領支持者は地方の人たちの一方で、「移民賛成」のトランプ大統領反対派が都市部の人たちです。

これに関しては皮肉ですね。

 

 

アメリカがとった対策

 

この「人手不足」の問題を受けて、アメリカ政府もただ黙って見ているというわけではありません。

アメリカ政府は農業の人手不足対策を見れば、同じ問題を抱えている日本もなにか学べるかもしれません。

 

ということで、ここからアメリカがとった人手不足を解消する対策を見ていきます。

 

①賃金アップ

 

これは単純な話ですね。

メキシコからの移民がまず最初に足を踏み入れる地と言えばカリフォルニアですね。

 

カリフォルニア州は昔から米やアーモンドなどの農作物が盛んです。

そんなカリフォルニア州もトランプ大統領の移民政策によって人手不足となっている州の一つです。

 

カリフォルニア州の農業の賃金は2010年から2016年にかけてなんと28%も上がっています。

 

②魅力的な待遇

 

アメリカは広いです。

筆者も現在アメリカに住んでいて痛いほど感じていますが、アメリカではどこに行くにも遠いので車が必須です。

 

これを考えてみると、アメリカの農業で働く方々は本当にきついですね。

というのも、都市部に住んでいる方は田舎の農村地帯まで毎日通うとなると、まさに「カントリーロード」のような道を片道数時間ただひたすら走ることとなります。

 

そこである会社は交通費支給はもちろん、農家の近くに「無料の社宅」を提供したりなどの待遇もしているほどです。

アメリカの田舎を車で走っているとまれにそのような「社宅」を見ることがありますが、社宅というよりも「人工的に作られた街」のような感じです。

 

つまり、農村地帯のど真ん中にかなり立派な一軒家が数軒立ち並んでいるのです。(本記事のトップにある写真のようなイメージ)

すごいですね。「これなら家族と共に引っ越しても良いな」という気にもなりますね。

 

③自動化

 

これはまさに今の日本の全産業が全力を尽くしてやっているものでもありますね。

つまりロボットの導入です。

 

ロボットを使って作業の自動化をすることにより、人件費を抑え、効率を良くしています。

 

 

日本の課題

 

ということで、本記事では「アメリカの農業の人手不足」に関して説明していきながら、移民政策がもたらしたアメリカの社会問題を見てきました。

アメリカは「農業大国」と言われるように、世界一の農業生産立国でもあります。

 

これはかつてのアメリカの奴隷制度や戦争などの歴史が大きく関係しています。

現在でも海外で戦争をしたり、移民による安い労働者によってアメリカの農業は支えられています。

 

しかし、トランプ大統領の「反移民政策」により、アメリカの農業の人手不足が深刻になっているのが現実です。

アメリカと日本の農業は「そもそもが違う」とも言えますが、日本もアメリカが現在やっている「人手不足のための対策」から学べる点はあるかもしれませんね。

 

ということで、本記事はこのへんで終わりにしておきます。