派遣制度からわかる日本とアメリカの働き方の違い

派遣制度からわかる日本とアメリカの働き方の違い

 

近年日本では「契約社員」「派遣社員」などといった働き方がかなり一般的になってきていますが、昨今「働き方改革」も相まって、この「派遣労働」が問題になっていたりもしますね。

これはアメリカでも同じで、近年「人材派遣」がかなり増えています。

 

しかし日本と圧倒的に違うのは「派遣労働」が問題視されていることはアメリカではありません。

というよりも、日本の「派遣労働」が海外に比べ「異常」なのかもしれませんね。

 

ということで、本記事では「アメリカの派遣制度」に関して詳しく解説していきながら、「日本とアメリカの働き方・労働環境がどれだけ違うのか」ということを書いています。

 

アメリカの派遣制度

 

アメリカでは派遣のことを「テンポラリー・ジョブ(Temporary Job)」、つまり「一時的な仕事」と言います。

「派遣社員」とはつまり「派遣会社」という第三者が企業と個人の間に入って中で雇用される社員のことを指しますね。

 

「〜ヶ月だけ働く」という感じで、あらかじめ「雇用期間」が契約で決まっています。

繰り返しますが、この「派遣」という制度はアメリカにもあります。

 

ここから日本とアメリカの派遣制度の具体的な違いを詳しく見ていきましょう。

 

①給料水準が高い

 

上でも書きましたが、日本の派遣制度は度々「問題視」されることはあってもアメリカでは「派遣社員」というのは問題でもなんでもありません。(安定はしていませんが)

というのも、日本の派遣制度では派遣社員と直接雇用の社員とは給料が全然違います。

 

一方でアメリカはと言うと、派遣労働者の給料はわりと高いです。

というのも、アメリカの派遣労働者の市場では専門職のニーズが高く、例えば経理やエンジニアなどで雇われるパターンが多くなっています。

 

まず派遣会社が雇用した人材を契約に基づいて企業に派遣し、派遣先の企業は、派遣社員の給料とプラスαで派遣会社への取り分も払います。

給料はどのくらいかと言うと、専門職であれば15ドルほどが一般的です。

 

派遣会社へも払わないといけないので、派遣先の企業はトータル20〜30ドルほど払うことになりますね。

 

②即戦力のみを雇う

 

「派遣社員への給料+派遣会社へのマージン」を企業はプラスαで払わなければいけないということを上で書きました。

つまり派遣社員を雇用すれば企業はコストが高くつきます。

 

企業はなぜそこまでして派遣社員が欲しいのでしょうか。

「一時的に働いてくれる人が欲しい」からですね。

 

例えば一時的に技術者に来てもらいたい場合、そのためだけに広告費を出して、人材紹介サービスから候補者を紹介してもらい、面接や採用のプロセスをやるのはあまりにも効率が悪いですね。

特にアメリカは訴訟大国なので、面接はしっかりとやらなければ「訴えられる」というリスクもあります。

 

そこで派遣労働者というのはとても「融通がきく」ということで重宝されています。

 

③派遣期間

 

「3年ルール」とよく言われるように、日本の派遣制度は「派遣社員は3年以上同じ会社で働けない」という制度があります。

つまり3ヶ月単位で契約を更新していっても、3年目で「期間満了」となり強制的に契約解除になります。

 

アメリカにはこのような派遣期間に制限はありません。

 

④アメリカ⇨一時的な即戦力|日本⇨コスト削減

 

ここまででわかるように、アメリカでは多少高いコストを払ってでも「すぐに来てくれる即戦力が欲しいから」という理由で技術者を派遣で雇ったりします。

一方で日本の派遣制度は企業の「コスト削減」というのが根本にあります。

 

というのも、日本では一度正社員にしてしまうと「福利厚生」「終身雇用」「昇給賞与」といったものを企業は保証しなければなりません。

 

「社員=家族」

 

日本に古くからあるこの考え方ですね。

つまり一度雇ってしまえば解雇できなくなり、逆にコストがかかるということです。

 

そこで企業はそのへんのコストを削減するために派遣社員を雇います。

派遣会社にマージンを払ったとしても、終身雇用よりは安くつきますね。

 

筆者も今まで派遣社員として働いていたことがありますが、あれはひどいものですね。

言葉は悪いですが、派遣社員は最終的に「使い捨て」にされる末路が一般的です。

 

社内でも「派遣」だからといって、社員食堂が使えなかったり、自動販売機が使えない、座ってはいけないなどなど、露骨に差別されることもあります。

 

つまり「社員=家族」の考え方は、逆に言うと「派遣社員=よそ者」という文化を作っているとも言えます。

そのへんでアメリカの派遣は気楽です。

 

働き方の違い

 

ということで、ここまで「日本とアメリカの派遣制度の違い」を見てきましたが色々と違いがありますね。

中でもアメリカの派遣制度は「一時的な即戦力の確保のため」という一方で、日本の派遣制度は「企業のコスト削減が根本的な目的としてある」ということかもしれませんね。

 

アメリカでは「明日から来なくていいよ」と言われることも普通にあります。

こわい話ですが、業績・態度があまりにも悪かったり、怪我や病気などの場合でもすぐに解雇できます。

 

極端な話ですが「あなたの髪型嫌いだから明日から来ないで」これでもクビにできるレベルです(本当)。

「人種や国籍、宗教意外の理由であれば何でもOK 」と言われています。

 

一方日本はというと、そんなにカンタンには正社員をクビにはできません。

労働者は労働基準法で守られているからですね。

 

だからこそ企業はすぐに契約を切れる「派遣社員」が欲しいわけです。

これが現在「派遣労働者」「派遣社員に対しての差別」が増えている要因でもあります。

 

皮肉な話ですが、労働者を守るはずの法律が逆に「働き方」を制限しているとも言えるのかもしれませんね。