【ウイグル人収容所】中国はなぜウイグル人を弾圧&収容するのか

【ウイグル人収容所】中国はなぜウイグル人を弾圧&収容するのか

 

「中国人」と聞くとまず思い浮かべるのは日本人や韓国人と同じ顔立ちをした「東アジア系」の人種かと思います。

しかし、その私たちが考える「中国人」というのは「漢民族」にしか過ぎず実際は中国というのは様々な人種が住む「多民族国家」です。

 

日系中国人、朝鮮系、ロシア系、満州族、チベット族、モンゴル族、ベトナム系、チャン族、トーアン族などの少数民族を数え上げればキリが在りません。

また、香港やマカオ、台湾など外国の文化を多く取り入れた地域などもたくさんあります。

 

宗教に関しても様々です。

したがって、中国とは私たち日本人や世界の多くの方々が考えるよりも多文化・多民族の国です。

 

そこで今現在起きているのが「ウイグル人への弾圧」です。

本記事ではウイグル人収容所について解説していきながら、「中国はなぜウイグル人を弾圧するの?」という疑問にお答えしていきます。

 

中国の民族構成

 

上でも書いてあるように、中国は多民族国家です。

中国国内には様々な人種や民族、宗教、文化を持つ方々がいます。

 

中国の人工密度

出典:中国の県(および県レベルの市・区)別人口密度

 

こちらの人口密度のマップを見てもわかるように中国の人工は東側に集中しています。

この東側の地域に漢民族が集中しています。

 

ちなみにですが、この東と西の境を「コッカ・トーショー線」と呼びます。

 

黒河・騰衝線(コッカ・トーショー線)

出典:黒河・騰衝線

 

つまり人工密度と同様に都市の繁栄も東側に集中しています。

中国の大都市、香港、上海、北京、重慶などなど、いずれもこのコッカ・トーショー線の東側に位置しています。

 

中国の巨大な山脈や広大な平原、砂漠などを見たい方は西側への観光がおすすめです。

 

そして「この線の西側には誰が住んでいるの?」ということですが、西側の民族構成は主に少数民族です。

 

中国共産党について

 

ここまでで中国がいかに巨大で多くの民族が住む国だということがわかったかと思います。

移民の国であるアメリカは言うまでもなく様々な人種の人たちが集まっていますが中国も同じようなものです。

 

しかし、アメリカと中国の決定的な違いは言うまでもなく政治のあり方です。

ウイグル人への弾圧を説明する前にまずは中国共産党とその独裁政権について説明しなければなりません。

 

アメリカはその国の名前からわかるように「合衆国」です。

つまり、それぞれの州が力を持ち、国民一人ひとりに投票の自由、大統領を選ぶ権利があります。

 

一方中国はというと、一党独裁制の社会主義国家です。

あくまで中国の国家権力は共産党の決定に基づき、国民一人ひとりの統一を目指しています。

 

つまり、「国民」として共通の思想やモラルを徹底していかなければ成り立たないのが現実です。

アメリカの政治がいいのか、中国の政治がいいのかということではなく、これらが両国の決定的な違いでもあります。

 

 

ウイグル人とは?

 

新疆ウイグル自治区

出典:新疆ウイグル自治区

 

中国のウイグル族は主に「新疆ウイグル自治区」と呼ばれるこのマップで言う赤く塗りつぶされた地域に住んでいます。

世界地図で見るとわかるようにキリギスタンとカザフスタンにとても近いです。

 

つまり文化的には漢民族よりもテュルク系民族・中央アジア圏の方が近くなります。

言語に関しても「ウイグル語」と呼ばれる言語があり、これもテュルク諸語の一つです。

 

この文化や歴史、言語すらも独自のものをもった民族を中国共産党は中国の一部として主張しています。

 

ウイグルの歴史

 

ウイグルは他国に幾度と無く侵略された歴史があります。

チンギスハンの時代にはモンゴル帝国に支配され、17世紀には中央アジアを支配していた遊牧民族「ジュンガル」に征服されます。

 

その直後にジュンガルと清(当時の中国)の間で「清・ジュンガル戦争」が起きます。

これにより清がジュンガルを征服し、必然的にウイグルは清の支配下になりました。

 

しかし、その後の1933年と1944年の二度に渡ってイスラム教徒によって民族国家東トルキスタン共和国の建国がはかられます。

国共内戦で制した中国人民開放軍はこの地域を展開し1955年に新疆ウイグル自治区が設置されることとなります。

 

地理的重要性

 

さて、戦後ウイグルは中国共産党軍によって「開放」されたわけでありますが、現在この地域が「東トルキスタン共和国」として独立しても中国共産党はそれを許しません。

それは単純にこの地域は中国にとって戦略的に非常に重要だからです。

 

①天然資源

 

中国がウイグルにこだわるのはこの地域には豊富な天然資源があるからです。

中国全体の約40%の石炭をこの地域がまかなっています。

 

20%以上の天然ガスとオイル、20%以上の風力発電のための電位があります。

国の発展、経済成長のために資源が欲しい中国にはウイグル自治区というのは非常に意味を持った場所でもあります。

 

②核実験

 

中国は世界でも有数の「核保有国」ですが、ウイグルは核の実験場としても利用されています。

この地域はほとんどが広大な砂漠で人も住んでいないため核の実験場に最適でもあるわけですね。

 

1964年から46回にわたってウイグル自治区に核爆弾が落とされています。

これらの実験による環境破壊や放射能汚染による人的被害なども出ているほどです。

 

③一帯一路

 

古代中国では「シルクロード」と呼ばれる巨大な交易ルートがありましたが、「一帯一路」とはこれらのような巨大な経済圏の樹立のことを指します。

「現代版シルクロード」とも言われています。

 

中国政府はこの現代版シルクロード・一帯一路の主導権を握るため、海外への経済的影響力、港や資源の確保に全力を注いでいます。

ウイグル自治区はこの構想のためにも非常に重要な地域でもあります。

 

出典:China’s secret internment camps

 

この地図を見てもわかるようにこの中国が構想する経済圏はウイグルなしでは成り立ちません。

 

 

同化政策と弾圧

 

民族も文化も言語も違うウイグル族をどうやって支配するべきか考えた中国共産党は、まず「同化政策」というものを始めました。

 

漢族大量入植

 

ウイグル自治区の民族構成

黄色⇨ウイグル族

水色⇨漢族

出典:China’s secret internment camps

 

1945年のウイグル自治区の民族構成はウイグル族が人工の82.7%を占めていました。

同時にその時の漢族の割合はわずか6.2%です。

 

しかし、この漢族大量入植により2008年には漢族が39.2%にまで増えています。

ここで最も問題なのが、漢族の大量入植によりウイグル族は職が奪われて経済的に困窮しているのが現実です。

 

下のグラフを見てもわかるように、ウイグル族は比較的賃金の低い肉体労働や過酷な農業などをメインにやり、漢族がホワイトカラーの職を担っているのが現実です。

 

黄色⇨ウイグル族

水色⇨漢族

出典:China’s secret internment camps

 

これによりウイグル自治区を中国の一部にしようという政策を行っているのが中国共産党です。

しかしこの現実をウイグルの人たちも黙っているわけではありません。

 

2009年には中国政府に対して「民族差別」を訴えるデモを行いました。

しかし結果として及ぼしたものは武力による弾圧でした。

 

ウイグル人収容所

 

ウイグル自治区に住む過激なイスラム教徒や独立派などを中国共産党は徹底的に監視するようになったのが3年ほど前の話です。

ヒジャーブを着た者やひげを生やした人は強制的に逮捕されました。

 

また、ウイグルの街中には徹底して監視カメラを設置しています。

 

去年12月(2018年)には約100万人のウイグル人が中国共産党によって強制収容所に収容されているという情報も出ました。

生還者の一人によると、「7ヶ月間ずっと両手両足に鎖の枷をつけられて、寝る時も食事の時も、1日24時間、ずっとその状態だった」と言い文字通り「地獄のようだった」と語っています。

 

収容所内では中国共産党について「学習」したり、国家斉唱をしたりというようなプロパガンダを行い、狭い部屋に数十人が押し込まれていたと言います。

食事に関しては中身のない粗末で小さな中華饅一つ、薄い野菜スープのみで、少しでも反抗的な態度を見せれば、被収容者達は拷問されるのも日常茶飯事と語っています。

 

「壁の前で24時間立ち続けさせられたり、真冬に氷の上に立たされて、冷たい水をかけられたり。天井から逆さに吊るされたり、鉄の椅子に縛り付けられて棒で殴られ続けたり…様々な拷問が行われていました」

 

出典:中国当局、100万人を強制収容所に-新疆ウイグル自治区での「民族抹殺」、生還者らが告発

 

 

多くの人に知ってもらいましょう

 

ここまで読んでいただいてわかるように中国政府がウイグル人や中国の少数民族に対しての行いは非人道的です。

 

日本のメディアはこのウイグルでの中国共産党による弾圧をニュースで報道しません。

「報道しない」というよりも、「報道できるほど十分な情報が入ってこない」というのが事実です。

 

これは逆に言えば、中国政府による監視体制がかなり厳しいということでもあります。

生活上の不満を少しでも漏らせば収容所送りになってしまうため、現地取材は不可能というのが現実でもあります。

 

また、ウイグルに関してはメディア関係の人たちでさえ「詳しい人がいない」というのも問題となっています。

 

イスラム諸国や他の海外の国々に関してもこの件については何も言いません。

単純に中国との仲を悪くしたくないからというのが本音です。

 

つまり、上でも書いた「一帯一路」や中国の経済的な影響力が高まっている中で批判しにくいというのが現実です。

この問題がなかなか取り沙汰されないのはこのような問題があるからですが、今後ネットなどで個人がウイグル問題についてもっと情報を広めて少しでも関心を持ってもらえばいいかなと思います。

 

 

 

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