【イエロージャーナリズムとは】歴史から見る米国メディアの大罪

【イエロージャーナリズムとは】歴史から見る米国メディアの大罪

 

はじめに▼

とある友人「アメリカのメディアって日本みたいに偏ってるの?」

僕「個人的には日本よりもひどいと思う」

とある友人「イエロージャーナリズムって聞いたことあるけどあれって結局なんなの?」

僕「メディアが国民を煽りまくってスペインと戦争させたんだよ」

 

筆者は以前アメリカの大学でジャーナリズムを専攻していました。

ということで、先日こんなツイートをしました⇩

 

https://twitter.com/masaya_minato/status/1102323172551127041

 

現在アメリカでは「国家の分断」が深刻な問題となっています。

保守派とリベラル派の対立・白人とその他の人種の対立・貧困層と富裕層の対立・アメリカの問題はかなり深刻です。

 

これらの対立を助長しているのはある意味メディアでもあります。

本記事では「イエロージャーナリズムとは?」という疑問に答えていきながら、米国メディアの歴史と今後の課題について解説して行きます。

 

 

イエロージャーナリズムとは?

 

イエロージャーナリズムとは、事実よりも国民の感情に訴えるような報道をすることです。

つまり扇動的な報道をすることによって、発行部数を増やしたり、視聴率を伸ばすメディア・報道姿勢のことを指します。

 

最近ではネット記事でよく見られます。

タイトルや見出しで読者を煽ってクリック数を稼ぐ方法です。

 

こちらの「Yahoo!ニュース」のタイトルが良い例です。

トランプ大統領、日本の記者の英語に「何を言っているかわからない」「出身どこ?」

 

「トランプ大統領が日本人記者に対して失礼な態度を取った」ということで結構前に話題になりましたが、このタイトルは明らかに読者である日本人の感情を煽っています。

 

「何を言っているかわからない」「出身どこ?」⇦このようにトランプが日本人記者に言った⇨これは人種差別だ。

 

初めてこのタイトルを見る人にとっては、間接的にこのように伝わることもあるでしょう。

当然差別されることに対しては敏感になるので、この記事をクリックします。

 

実際に記事を開いてみると、「トランプ大統領の発言は差別だったのか」ということは判断しづらいです。

記事の内容・本当にトランプ大統領が差別的だったかどうかに関しては賛否両論・本人にしか分からないのでここでは割愛しますが、「何を言っているかわからない」「出身どこ?」このように書けば視聴者は敏感に反応するのが当然ですね。

 

ちなみにですが、上の「Yahoo!ニュース」をはじめ多くのネットニュースはこの手のものが多いです。

 

 

イエロージャーナリズムの発端

 

「イエロージャーナリズム」が最も効果を発揮したのが、19世紀後半のアメリカです。

1898年に「米西戦争」というアメリカとスペインがキューバを巡って戦争をします。

 

この戦争の発端となったのがイエロージャーナリズム、つまりメディアだと言われています。

というのもこの時期にアメリカで起こっていたのが、NYワールド紙 対 NYジャーナル紙」の発行部数争いでした。

 

双方ともに新聞の発行部数を伸ばすためにどんどん過激・扇動的な記事を発行していきます。

1897年のとある日にハースト系の新聞(NYジャーナル)が「アメリカ婦人を裸にするスペイン警察」という記事をスクープしました。

 

現在では「この記事の信頼性は著しく乏しい」とされていますが、当時のアメリカ国民はスペインに対して激怒します。

さらに当時スペイン領であったキューバは19世紀半ばから独立運動をしてきましたが、キューバに対して好意的な意見が生まれてくると同時に「キューバをスペインから開放するべきだ」との声が高まりました。

 

これにより、アメリカは米西戦争に進みます。

結果的にこの戦争が「アメリカ帝国主義」に火をつけます。

 

アメリカではメディアよって「戦争賛美」が起こり、ハワイ王国・フィリピン・プエルトリコ・グアムを次々に植民地化していきました。

 

アメリカの歴史とメディア

 

「ボストン大虐殺(Boston Massacre)」

「リメンバーパールハーバー(Remember Pearl Harbor)」

「テロとの戦い(War on Terror)」

 

アメリカにはこのような有名なセリフがいくつかあります。

これらの言葉は時代とともに国民を煽り、その度にアメリカを戦争に導いてきました。

 

ボストン大虐殺とは?

「ボストン大虐殺」とはアメリカがまだイギリスの植民地だった頃に起きた出来事です。

 

当時イギリスの圧政に抗議をしていた人達がボストン港でイギリス兵士によって殺害された事件です。

「大虐殺」という言葉を聞いて連想するのは何百人・何千人の犠牲者を想像するかと思います。

 

実際にイギリス軍に殺害されたのは民間人5人だったのですが、地元の新聞は「ボストン大虐殺」と報道しました。

これにより、当時植民地だったアメリカの人々はイギリスに激怒し、アメリカ独立戦争へと進みます

 

リメンバーパールハーバーとは?

これは日本史・世界史を勉強した方は知っているかと思います。

日本の「真珠湾攻撃」によってアメリカが「真珠湾攻撃を忘れるな」として第二次世界大戦へと進むキッカケになった出来事です。

 

当時のアメリカの新聞は徹底的に真珠湾攻撃による日本の非道さと裏切りを強調しました。

それだけでなく、天皇陛下への侮辱・日本人に対するプロパガンダがアメリカでは横行しました。

 

これにより、それまで反戦だった国民の感情を煽り、アメリカは第二次世界大戦へと進みます。

 

テロとの戦いとは?

こちらは現在進行形で起こっています。

2001年9月に起こったニューヨーク・同時多発テロを引き金にしたイスラム原理主義・テロリストとの戦いです。

 

メディア各紙はテロの標的となったワールドトレードセンターでの惨状や犠牲者の家族の現状などを報道し、「対テロ感情」がアメリカ国民の間で爆発します。

結果的にブッシュ政権時のアメリカは「テロとの戦い」とし、アフガニスタンに侵攻しました。

 

日本メディアの大罪

 

イエロージャーナリズムが横行したのはアメリカだけではありません。

日本史上最も悪名高いのは第一次世界大戦から第二次世界大戦中にかけての日本のメディアによる扇動報道です。

 

当時の日本は日清戦争・日露戦争・第一次世界大戦を経て負け知らずでした。

そのうちに日本国内では「戦争賛美論」が高まり、各新聞社もこれに乗じて帝国主義による日本のアジア進出を称賛するようになります。

 

これによりメディア各社は新聞発行部数を上げていきました。

 

百人切り競争

日本が満州事変を皮切りに中国大陸へと進んでいくと、メディアは国民をどんどん煽っていきます。

日本が中国大陸で泥沼の戦争に陥った時も、日本のメディアは戦況を冷静に判断・評価するわけでもなく国民感情を煽っていきます。

 

代表的なのが1937年12月13日東京日日新聞の「百人切り競争」という見出しの記事です。

これは日本兵が中国人の首をハネる内容を「武勇伝」として記載し国民を高調させました。

 

参考:百人切り競争

 

国連脱退を称賛

満州事変⇨満州国成立により国際社会から日本が徹底避難され、当時の外交官で国連総会に出席した松岡洋右氏はその場で国連から脱退を表明します。

満州における日本の合理性を国際社会に伝える重大な役割を担っていた外交官であるはずなのに、このような結果となったのは明らかな「外交での失敗」でした。

 

松岡洋右氏本人もその時は日本に帰国するなり、批判を浴びせられると信じていました。

しかし、日本に帰国するなり国民はむしろ歓迎ムードです。

 

というのも、新聞各社は「日本の国連脱退」を「外交の失敗」ではなく、「よく言った」というように報道していたのです。

 

「このように報道した方が人気が出る」

 

ただこれだけの理由からです。

 

その後日本の戦況が進むにつれて、日本のマスメディアは国からの言論統制を受けることになりますが、このようにメディアの戦争責任はとてつもなく大きいものであるということがわかります。

 

 

米国メディアと今後の課題

 

現在アメリカで問題となっているのが「人種問題での分断」です。

これはメディアにおける罪が大きいというのが現実です。

 

「警察官による黒人への非道な対応」

 

警察官(白人)が犯罪者(黒人)を発砲し殺害するという事件がアメリカで横行しています。

このような人種間の事件を大きく報道することによってアメリカ国民は高調するので、メディアは大きく取り上げます。

 

しかし、実際は犯罪者を対応する上で警察官も必死なのも事実です。

 

特にアメリカは銃社会なので、犯人を捕まえる過程で「いつ撃たれるかわからない」状況の中で「仕方のない発砲」⇛結果的に死亡

このようなケースもあるのにほとんどのメディアは報道しません。

 

なぜなら、「人種差別だ」と報道したほうが国民の賛同を得られるからです。

結果的に、白人・保守層はどんどんメディア&リベラル層に対しての不満が高まります。

 

上のようなリベラル系メディアを徹底批判するトランプ大統領が当選したのもこのような背景からです。

このようにメディアは国の明暗を大きく担います。

 

今後ともメディアは強い影響力を持ち続けると思いますが、何よりも「バランス」が大事ですね。