【歴史から見る】アメリカで高速鉄道が普及しない5つの理由

【歴史から見る】アメリカで高速鉄道が普及しない5つの理由

 

「今度アメリカに旅行で行くんだけど、複数の都市に行ってみたいな」

 

こんな方も多いと思いますが、アメリカにおいての都市間の移動はかなり労力を消費します。

特に日本やヨーロッパ、他のアジアの国々と比べて国土が広いアメリカ、日本にいる感覚で都市間の移動を計画すると、「思ったよりも遠かった」ということも多々あります。

 

筆者も昔ロサンゼルス〜サンディエゴ間を旅した時に経験しましたが、地図で見れば近く感じる距離感でも時間のかかり方が違います。

例えばシアトルからサンフランシスコに行って、その後ロサンゼルスにも行ってみたいなという方は飛行機か自動車という選択肢しかありません。

 

一応アムトラックもありますが、これがものすごく遅く、値段もそこまで安くないのが特徴です。

そんなアメリカの交通事情ですが、なぜアメリカには高速鉄道がないのでしょうか。

 

本記事では、「アメリカで高速鉄道が普及しない5つの理由」ということで詳しく解説していきます。

 

①広すぎる

 

「アメリカは国土が広すぎるから」というのがまず一つ目の理由として挙げられます。

日本の新幹線で言えば、時速300kmほどで東京〜京都(450km)ほどの距離を約3時間弱で行くことができます。

 

アメリカのような国土では、「車よりも速くて飛行機よりも遅い」高速鉄道は中途半端なのもが現実です。

その中途半端に便利なものを作るのにレールを敷いてインフラを1から整えていくのにあまりにも費用がかかりすぎるという意味で「コスパが合ってない」ので現在においてもアメリカに高速鉄道は存在しません。

 

ちなみにですが、日本の新幹線は1964年に初めて開通され、これは世界で初めての高速鉄道でした。

当時この新幹線の技術で何がすごかったのかというと、そのインフラにあります。

 

つまりレールやその徹底されたシステムが世界から最も注目された点でした。

高速鉄道というのはインフラを整えるのにものすごい費用と労力がかかるわけですね。

 

 

②車&飛行機産業が発達してる

 

アメリカは車社会です。

最寄りのコンビニに行くにも車を使い、土日には10時間ほど運転して隣の州に旅行しに行くことも珍しくありません。

 

出張や旅行などで時間をかけたくない時はもっぱら飛行機を使います。

というのもアメリカは車社会な上に飛行機産業も発達しています。

 

アメリカの航空機産業が発達しているのは軍事力と深い関係があるのですが、ボーイングをはじめアメリカ産の飛行機は世界中に輸出されています。

特にアメリカはオイルなどの資源に困っていなく、ガソリンは先進国の中でもかなり安いです。

 

至るところに空港があり、格安航空券もすぐに手に入ります。

つまり空港が日本でいう駅のような都市間を結ぶ役割を果たしていて、日本とは比べ物にならないほど飛行機での移動が身近です。

 

これが高速鉄道の発展にそこまで力をいれる必要がないという理由に繋がっています。

 

 

③自動車製造関連の圧力

 

ここからは政治的・経済的な視点&利権が絡んでいくのですが、車社会の弊害がここで出てきます。

1900年代初頭、アメリカは鉄道先進国でした。

 

全米に鉄道網が張り巡らされ、輸送や移動の便利性では世界を圧倒していたほどです。

しかし、この流れが一変するのが1920年代のことです。

 

1920年代になにがあったのかと言うと、「車の普及」です。

1929年の大恐慌と重なり、弱っていた鉄道会社をGMをはじめとする自動車メーカーと石油会社が買収しました。

 

その後も止むことなく、自動車メーカー、タイヤ、ガソリンなどの製造関連会社がロビー活動をした結果、現在の「車社会」を築いていきました。

まさにアメリカらしい資本主義の世界ですが、これがいつまで経ってもアメリカの鉄道産業が発展しない原因の一つでもあります。

 

 

④土地が私有制

 

「中国もアメリカと同じように土地が広いけど高速鉄道の発展に成功してるじゃん」

こんな疑問を持っている方もいるかと思いますが、アメリカと中国では決定的に異なる点が「土地」にあります。

 

アメリカの土地は「私有制」なのに対し、中国では「土地は人民のもの」ということになっており、個人による土地の所有権が認められていません。

これにより、中国政府は土地の収容がしやすいという鉄道建設のための大きな利点があります。

 

また、中国の著しい発展はここ数年によるもので、高速道路や空港の設備がまだまだ発展していないことも高速鉄道の整備にまず着手した理由でもあります。

上でも書きましたが、アメリカは中国とは違い、すでに高速道路や空港のインフラが整っているので、高速鉄道に多額のお金をかける理由があまりにもないことが言えます。

 

 

⑤政治

 

2015年フィラデルフィアでアムトラックが脱線事故を起こし、8名の方が亡くなるという事故が起きました。

この事故はアムトラックの整備不良が原因とされているのですが、全米のアムトラックの路線で整備不足が深刻になっているのが現実です。

 

整備をしたいのはやまやまなのですが、そもそも乗る人が少ない、乗客数が足りていないので予算が回らない。

さらには議会も十分な予算をアムトラックにはかけてなかったのも原因でした。

 

この現象と同じように政治家が「鉄道網を発展させよう」と言っても有権者が賛成しません。

アメリカ人の多くが電車よりも車や飛行機を利用することから、「電車に予算を使うくらいなら道路整備をしてくれ」ということで、一向に前に進まない状況です。

 

実際にオバマ大統領時代には80億ドルに及ぶ高速鉄道計画を提案していますが、これも白紙になっている状態です。

 

 

今後の課題

 

ここまで「アメリカには高速鉄道はない」という前提で書いてきましたが、アメリカにも一応ですが、「アセラ・エクスプレス」という特急列車があります。

これはボストンからワシントンDCを結ぶアムトラックの鉄道会社が運営しているものですが、日本含む他の先進国の高速鉄道に比べると、安全性やスピードでは比べ物になりません。

 

そもそも在来線が走る線路を走るため高速化には限界があったり、故障も相次いでいます。

そういった意味では世界最高水準と言われる日本の新幹線の技術を積極的に海外に輸出するのも日本としては今後の大事になってきています。