当ブログ「ミナトのすゝめ」ではアメリカの文化、政治、歴史に特化した記事をご紹介しています。
ということで、先日ツイッターこんなことをつぶやきました⇩
不思議だ。
中西部の田舎ですが、学生でもトランプ好きな人本当に多い。
このへんでトランプの悪口を言うのは外国からの留学生くらい。
つまり現地の人達からはわりと本気で支持されてる。
みんな言うのが「移民は支持するけど不法移民は無理」 https://t.co/GzV7qb590i
— マサヤ🇺🇸ミナトのすゝめ (@masaya_minato) 2019年7月12日
筆者は現在アメリカの中西部に位置する「ノースダコタ州」というところに住んでいます。
「どこそこ?」という方も多いかと思いますが、まさにアメリカの田舎中の田舎です。
日常的にヒッチハイクや乗り合いをして買い物に行くこともしばしばあるくらいのレベルです。
こんな地域に住んでいるとアメリカ人の「切実な意見」を聞くことができます。
ツイートにもありますが、中西部の田舎ではトランプ大統領はわりと本気で支持されています。
本記事では「実際どうなの?」ということで、アメリカ国内におけるトランプ大統領の実際の評価と政策が及ぼしている副産物を都会と田舎に分けながら詳しく解説していきます。
トランプ大統領・地域別の評価
都会⇨民主党支持(ヒラリー・クリントン)
田舎⇨共和党支持(ドナルド・トランプ)
2016年の大統領選のではこのようにわかりやすくトランプ支持とクリントン支持が別れました。
つまり、比較的人工の多い東海岸(ニューヨークなど)や西海岸(カリフォルニアなど)ではヒラリー・クリントンが勝っていたのですが、中西部や南部ではドナルド・トランプが勝ちました。
上のマップは地域の特色をはっきりと表していると言えます。
クリントン支持である青色の地域は基本的に「リベラル」です。
例えばカリフォルニアなどでは、マリファナや同性婚が合法化となっていて、わりと「革新的」ですね。
逆に中西部や南部では「古き良きアメリカを守る」というような人が多い傾向にあります。
移民政策、銃所持の自由、温暖化、資本主義、医療問題、このへんが地域によってかなり意見が異なる点ですね。
では一つ一つ詳しく見ていきましょう。
地域の差①:移民政策
・都会⇨移民が多い
・田舎⇨移民が少ない
・メキシコ国境沿いの地域⇨不法移民が多い
都会の意見
基本的にカリフフォルニアやニューヨークは移民の数が半端ないです。
2017年時のカリフォルニアの人口統計では、ラテン系が最も多く38.9%となっています。
その次に白人37.7%、アジア系14.8%、アフリカ系6.5%となっています。
アジア系が14.8%となっていますが、日系や中国系アメリカ人の数も他の州に比べ圧倒的な数です。
また、「イノベーションの聖地」とも言われるカリフォルニア・シリコンバレーですが、このへんのベンチャー企業家は移民が多いのが現実です。
逆に言えば移民排除は「シリコンバレーの終焉」を意味します。
こういう都会では「移民を歓迎すべきだ」、「多様性を受け入れるべきだ」という声が大きくなります。
トランプ大統領の政策に反対するのは必然的とも言えますね。
田舎の意見
上でもご紹介していますが、田舎の人たちもほとんどは「移民大歓迎」です。
しかし本当に反対をしているのは「不法移民」のことです。
結局アメリカも「移民の国」なので、海外のお金持ちや技術者にはぜひ来てほしいのですね。
しかし、アリゾナ州やニューメキシコ州などメキシコと直接国境を面している地域では「ドラッグ・トラフィッキング」が大問題になっています。
中南米のギャングが薬物をアメリカ国内に持ち込んで、アメリカ人に売りさばいてビジネスをしているんですね。
昔イギリスが清(中国)にアヘンを輸出しまくって戦争になりましたが、これに似たようなことがアメリカ&メキシコ国境で起きています。
これを実際に間近で見ている人たちにとっては国境警備は死活問題です。
「壁を建設しよう」というのが合理的だと思えなくもないですね。
余談ですが、前に友達の実家(ノースダコタ)にお邪魔した際に友達のお父さん(50代)と政治の話になりました。
「日本は海があるから不法移民なんて来ないからいいな」と言われたのを覚えています。
地域の差②:銃規制
・都会⇨治安が悪く、銃犯罪が田舎に比べ圧倒的に多い
・田舎⇨アメリカの田舎ではある意味銃が必須 (後述します)
銃規制=リベラル (民主党)
銃規制反対=保守 (共和党)
このような政治政党のわかれ方をしています。
ロサンゼルス、シカゴ、ニューヨーク、このへんの都会はすべて治安が悪く、銃を使った犯罪も昔から多発しています。
したがって、都会に住む方々は「銃規制をすべきだ」という人が多く、結果的に民主党支持者(トランプの反対)が多いです。
特にシカゴなんかでは年間の死亡率が「イラクよりも多い」とまで言われているくらいです。
ロサンゼルスやニューヨークでもギャングが多いのが現実で社会問題にまでなっています。
アメリカの田舎ではある意味で銃が必須
一方でアメリカの田舎では銃がわりと必須になってきます。
これはどういうことかと言うと、アメリカの農村部では自分の農場を持っていたり、日常的に狩りをして生活している人も多いです。
こういった農家では野生動物などの鳥獣被害が深刻でもあります。
シカ、イノシシ、ガチョウ、オオカミなどの対策をしなければなりません。
また、日常的に狩りをして食料としている家庭も多いです。
なにもない田舎では基本的に警察は当てにできないので(物理的に)、侵入者や犯罪者、野生動物に襲われたら「自己防衛」するしかありません。
逆に都会では「ヴィーガン」というのが最近話題となっていることからわかりますが、肉や魚などの生き物を食べない「絶対菜食主義」の人が多くなっています。
このように「田舎の人たちの生活」からかなりかけ離れているのが、彼らが理解しあえない原因なのかもしれませんね。
田舎の人たちからすると、「都会の人間は農場の苦労を知らない」「銃の本当の使い方を教えていない」ということになります。
実際に彼らは銃をかなり丁重に扱います。
地域の差③:温暖化
都会⇨交通量、ゴミのポイ捨てが多く環境問題が深刻
田舎⇨工場で働く人が多く規制は死活問題
2017年6月トランプ大統領は「アメリカのパリ協定離脱」を表明しました。
「私はパリの市民に選ばれた大統領ではなく、アメリカの国民に選ばれたんだ」
このような発言をしていましたが、パリ協定というのは「アメリカ経済にとってあまりにも不利益だ」ということですね。
アメリカでは重工業、石油産業、石炭産業がアメリカ経済を支えています。
特に、ウェストバージニア、オハイオ、ペンシルベニア州などの石炭生産地域では海面上昇や気候変動よりも自分の仕事のほうが心配なのは当然ですね。
田舎の地域では空気はきれいで街中には基本的にゴミもないので、「環境問題」と言ってもあまり実感がわかないのかもしれませんね。
カリフォルニア、ワシントン、ニューヨークの3州に関しては、トランプ大統領のパリ協定離脱発表後に連合を組み連邦政府の考えとは無関係の州レベルで温暖化対策に取り組む意思を表明しています。
地域の差④:資本主義
都会⇨競争が激しく失業者が多い
田舎⇨むしろ地域の活性化、労働者が必要
アメリカは日本と比べ物にならないくらい貧富の格差が深刻です。
しかしこれは都会に限った話です。
貧富の格差に関してはこちらの記事でも詳しく書いていますが、例えばアメリカの格差の象徴でもあるのが「ウォルマート」です。
「ウォルマート」とはアメリカのチェーン店で「なんでも安く変える」というのがウリです。
アメリカ国内には5000店舗を越えるウォルマートがあると言われていて、都会や田舎に限らずどこにでもあります。
しかし、都会にウォルマートが進出すると悲惨です。
海外に多くの工場を持ち、格安の人件費で商品を生産&輸入して、格安で商品を売っている大企業に個人が勝てるはずがありませんね。
結果的に個人小売り店が相次いで潰されてしまっているのが現実です。
競争が激しい都会で職を失った方は次の仕事を見つけるのが圧倒的に大変です。
逆に田舎や小都市では働き口などわりとたくさんあり、むしろウォルマートこそ地域の雇用活性化を生んでいます。
結果として、アメリカの都会では行き過ぎた資本主義により貧富の格差が生じ、失業者が増え、治安が悪くなっています。
これは田舎に住んでいるとわかりづらい問題でもありますね。
つまりこれが都会と田舎で支持する政治政党が大きく異なる要因です。
地域の差⑤:医療費問題
都会⇨貧富の格差が深刻で社会保障などを必要とする人が多い
田舎⇨ミドルクラスが多い
上で説明している「資本主義」がすべてですね。
都会では貧富の格差が深刻な一方で、田舎はミドルクラスが圧倒的に多いです。
庭付きの一軒家に住み、一家に1台、または1人1台車を持ち、週末は家族や友達とアウトドアなどで楽しむ。
アメリカの田舎ではこんな家庭が「ミドルクラス」です。
「失業するのも、医療費が払えないのも、自己責任だからそんなことに税金を払うのは嫌だよ」
こういうことになりますね。
繰り返しになりますが、田舎にいると都会の状況がわかりにくいのが現実ですね。
逆に言うと、日本に住んでいるとアメリカの田舎の暮らしは想像がつきにくいかもしれませんね。
【結論】アメリカは広い
アメリカは都会と田舎の文化が全く違います。
日本人の多くの方々はアメリカの都会と田舎を一緒に考えがちかもしれません。
しかし、日本の東北地方と東京の文化ではかなり違いますが、それ以上にアメリカの沿岸部と中西部は文化が異なります。
2016年のトランプVSクリントンの選挙でもこの「文化の違い」が大きく現れたと言えるかもしれませんね。
コメントを書く