英語には「Selective Empathy 」という学術用語があります。
日本語に直訳すると「選択的共感」という意味になるのですが、この単語にはわりと深い意味があります。
本記事ではこの「Selective Empathy 」の意味について、現在世界で起こっている国際問題に絡めて解説していきます。
「Selective Empathy」とは
「Selective Empathy」とは上でも書いているように、「選択的共感」という日本語に直訳されます。
「選択的共感」と言われても全く意味がわかりませんね。
つまり「人間というのは常に共感する相手を差別的に選んでいる」ということです。
これは極端な例ですが、自分の友人1人が亡くなった時と、他の国の戦争で何百人の人が亡くなった時では「共感の度合いが違う」ということですね。
他国に住んでいる何百人の命よりも、隣にいる一人の命のほうが大切というのは当然と言えば当然ですが、この現象を「Selective Empathy」と言います。
「Selective Empathy」⇨なぜ悪いの?
「Selective Empathy」という言葉ですが、これはネガティブな意味合いで使われることがほとんどです。
「でもこれがなんで悪いことなの?」
「人間なんだからそのへんを無意識に差別するのは当然でしょ」
こう思う方も多いと思います。
しかし現在世界で起こっている国際問題のほとんどがこの「Selective Empathy」によるものだからです。
平等というのは存在しない件
筆者は現在アメリカに住んでいるのですが、アメリカでスターバックスに行ってコーヒーを頼むと、プラスチックのストローではなく紙のストローが付いてきます。
去年くらいから話題になっていますが、スターバックスは「2020年までに全世界の店舗でストロー廃止」を掲げています。
また最近ではマクドナルドに行ってもストローが付いてきません。
これは言うまでもなく「プラスチックゴミが環境破壊の大きな原因となっているから」でもあります。
「プラスチックストローを廃止しようという運動が始まったのはいつから?」ということですが、もとを辿ると以下の動画が発端となりました。
※この動画にはショッキングな映像が含まれています
この動画は一頭の亀の鼻にプラスチックストローが入ってしまって、それを取り除いている映像です。
「亀がかわいそう」ということで、これが世界的に拡散されたことから始まりました。
当然ですが今起こっている環境問題はプラスチックストローだけが問題ではありませんね。
また、被害を受けている生き物は亀だけではありません。
マクドナルドでセットメニューを注文すればストローは付いてこない代わりに、プラスチックのスプーンはしっかりと付いてきます。
「環境問題に取り組んでいるよ」という「マーケティング戦略」でもあるのですが、これは「Selective Empathy」の代表例でもあります。
「マイクロプラスチックという目に見えないほどの小さなプラスチックゴミによって何万という海洋生物が苦しんでいる」という情報よりも、一頭の亀がストロー一本で苦しんでいる動画の方が人々は敏感に反応します。
さらに言えば、マクドナルドは温室効果ガスの約15%の原因でもある牛肉を大量生産している大企業でもあります。
食べ物関連で言えば、日本では昔から「捕鯨」が伝統文化でもありますが、捕鯨のニュースが欧米のメディアで取り上げられるたびに欧米の方々は日本を徹底的にバッシングします。
中国などの他のアジアの「犬を食べる文化」もそうですが、このように犬食やクジラ肉を食べることに徹底して反対している人も「牛肉や豚肉は普通に食べる」という人も多いのではないでしょうか。
これを「Selective Empathy」と言います。
普段のニュースでも言えることですね。
2015年11月に起きたパリのニュースでは、日本含む欧米メディアは数週間に渡って報道し続けました。
Facebookでも「Pray For Paris」というキャンペーンが起こりましたが、そんな中でも中東やアフリカで何百という命が亡くなっていても多くの人は気にしません。
日本含む先進国で自然災害、テロ、紛争など起これば大々的に報道されますが、発展途上国がスポットを当てられることはなかなかありません。
国ではなく、個人でも同じことが言えます。
権力、お金のある人、あるいはその身内、子供などと、路上で物乞いしている人ではあまりにも違います。
当然と言えば当然ですね。
つまり「人はみな平等」というのはありえません。
人間は無意識に差別、選択しながら生活しています。
ということで、本記事では「Selective Empathy」という英語の学術用語について「国際問題」を絡めて解説してきました。
「Selective Empathy」というのはどんな人も生まれ持った「感覚」でもあるのかもしれませんね。
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