日本ではお酒もタバコも20歳からオーケーとされています。
ヨーロッパの国々では16歳や18歳から飲酒が可能な国もありますね。
一方でアメリカはどうでしょうか。
アメリカでは先進国の中でもわりと厳しく、「お酒は全米で21歳から」ということになっています。
「16歳で車を運転でき、18歳で銃を持つことができるのにお酒は21歳から」
こんな皮肉をアメリカ人はよく言いますが、その理由はなぜでしょうか。
本記事では「アメリカのお酒事情」ということで、歴史をたどりながらそのへんの謎について詳しく解説していきます。
アメリカのお酒事情
繰り返しになりますが、アメリカではお酒はかなり厳しいです。
日本では電車の中であっても缶ビール片手にお酒を飲んでいる方々をよく見かけますが、あれをアメリカでやったら犯罪です。
つまり公共の場ではお酒を飲んではいけないということですね。
路上や駅前のベンチで「さかずき」を交わしている光景も日本ならではかもしれません。
昔日本に遊びに来たアメリカ人が見て驚いていましたが、アメリカでは基本的に外で飲酒どころか、お酒自体を見ることはありません。
コンビニなどでお酒を買った場合はそのまま車で持って帰るか、徒歩の場合はバッグに入れて持ち歩かなければなりません。
それくらいお酒に厳しいのがアメリカです。
こちらの記事でもお酒に関しては少しだけ触れていますが、アメリカはなんだかんだで「キリスト教の国」でもあるからなのかもしれませんね。
ではここからもっと詳しく、アメリカのお酒に関しての歴史を見ていきましょう。
禁酒法 (1920年〜1933年)
これもかなり昔ですが、アメリカには「禁酒法」という法律がありました。
これはアメリカ全米において、アルコールの製造、販売、輸送を全面的に禁止するものでした。
今で言う「薬物」と同じ扱いにアルコールもなったということですね。
この法律もたったの13年で廃止になりました。
というのも、今の「マリファナ」の問題と似ていますが、ギャングなどによる密輸が相次ぎ、アルコールの取締ができない上に税金も徴収できない、ひどい時にはお酒を巡って殺人まで起きてしまうという有様でした。
これも闇市場だけでなく、「実際みんなお酒飲んでるでしょ」ということで、一般人の手にも普通に行き渡るレベルでした。
これにより「禁酒法」はすぐに撤廃されました。
アメリカ史において「禁酒法=国民から最も無視された法律」という黒歴史が未だに残っています。
現在のマリファナと似ていますね。
ちなみにですが、アメリカではタバコよりもマリファナの方が吸ってる人が多いくらいです。
アメリカには「大麻ソムリエ」がいたり、大学に「大麻学部」があったり、「大麻バスツアー」なんてのもあるくらいだからな。
僕もクラスメートにiPad使って全力でマリファナについて解説されたことあるけど、それくらいアメリカでは今後マーケティングなんかにおいてこの分野は大きな市場でもある。 https://t.co/bW7LMy7gCU
— マサヤ🇺🇸ミナトのすゝめ (@masaya_minato) December 5, 2019
飲酒可能年齢18歳
禁酒法が廃止されてから、それぞれの州が各自で「飲酒可能年齢」を定めていきます。
1970年〜1975年の間に多くの州で飲酒可能年齢を21歳から18歳に引き下げました。
18歳から飲酒可能というと、現在のヨーロッパと同じですね。
なにもおかしなことはないのですが、これによりある問題が浮かび上がりました。
アメリカ=車社会
アメリカは車社会です。
電車や地下鉄、新幹線などがかなり発達している日本やヨーロッパに住んでいるとわかりづらいかもしれませんが、アメリカでは車がないと生きていけないのが現実です。
筆者が一番最初に留学した場所はインディアナ州でしたが、初日にホームステイのお父さんに「最寄りの駅ってどこですか?」と聞いて「ポカン」とされたのを覚えています。
アメリカには最寄りの駅どころか、電車やバスは基本的にありません。
場所によってはタクシーもないところもあります。
だからこそ「ウーバー」や「リフト」などの配車アプリが発達したのかもしれませんね。
話がそれましたが、つまりアメリカでは一人一台、高校生でも車で学校に通うくらい車は生活必需品です。
そこでなにが起きるのか大体想像が付きますが、「飲酒運転」が社会問題になり始めます。
「州によって違う」が弊害に
「アメリカ合衆国」というのは、それぞれの州が政治の権限を持っています。
州によって税金が違ったり、憲法が違ったり、州独自の軍隊もあるほどです。
日本の都道府県とはだいぶ違いますね。
お酒の話に戻りますが、飲酒可能年齢も州によって違いました。(当時)
結果として、
「自分がいる州では21歳からなんだけど、隣の州では18歳でもお酒が飲める」
こんなことになります。
そこで19歳、20歳などの若者は週末になるとはるばる車を運転して、お酒が合法的に飲める州に行ってお酒を飲む。
帰りはもちろん車を運転して帰らないといけないので、その帰りに飲酒運転で事故を起こすというケースが増加しました。
レーガン政権
この事態に素早く手を打ったのが「ロナルド・レーガン大統領」でした。
この飲酒運転の問題を、「州だけの問題ではなく、国を挙げて取り組むべきだ」とし、すべての州で飲酒可能年齢を21歳に引き上げると訴えます。
ですが、アメリカは歴史的に連邦政府がなにかを「独裁的に」決めることを嫌います。
「あくまで”合衆国”なのだから、法律は州で決めるべきだ」ということですね。
そんなこんなで、うまくまとまらなかったのですが、レーガン大統領は強硬手段を取ります。
「飲酒可能年齢の引き上げに抵抗する州の高速道路補助金の一部をカットする」
こんなことを言い放ちます。
その後、実際にそのための法律を作ってしまいました。
これは大統領の独断ではなく、この決断には様々な団体も支持していました。
飲酒運転によって命を落とした方の家族などがその代表ですね。
さらには「マイケル・ジャクソン」もこの飲酒運転撲滅のキャンペーンに乗り出します。
このキャンペーンのために「Beat It」の使用を許可し、レーガン大統領から「Public Safety Commendation(公的安全表彰)」というものを授与しました。
このときの動画がこちらです⇩
こんな努力もあり、ついに1988年には「すべての州」で飲酒可能年齢が21歳に引き上げられることになりました。
ということで、これが「アメリカではなぜお酒は21歳からなのか」という答えです。
この裏には宗教上の問題だけでなく、社会問題が深刻化したという歴史があったからですね。
「アメリカ=車社会」ということで、飲酒運転を減らすためには飲酒可能年齢が21歳というのも納得できるかもしれませんね。
「アメリカのマリファナ事情も知りたいな」
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